剣姫照魔伝 プレイヤーをつのるの巻 書いた人:友野詳
はい、ふたたび友野です、まいど。
源平鬼御魂、リプレイが書かれるまで篇の続きでございます。
さて。
背景となる時代は決まったわけです。
次に相談するべきは、誰をプレイヤーとするべきかでしてね。
ここで。
わたくし、友野には一つの案がございました。
打ち合わせ中、北沢、田中、力造の面々をぐるりと見回して、こう提案をばいたすわけでございます。
「きみらをプレイヤーにしてセッションをすれば、面白いものができる。それはわかっている。けどな、それでは……『挑戦』がない。わしはそう思うのや」
「ちょ、ちょっと待ってください、友野さん。鎌倉時代を舞台にしたTRPGは、すでに充分な挑戦なのでは?」
もっともな意見です、北沢くん。
「いや、企画としてはそのとおりなんではござるがな。むしろ、語りべとしてのワシ自身への『挑戦』ととってくれい。わがままを言うが、ひとつ腹案がある。おのおのがた、ここは一つ、わしにまかせてはもらえぬか」
「なんで時代劇口調」
そりゃ時代劇だからやがな、田中くん。
さてそこで。
彼らの注視の中、携帯を取り出して、おもむろに連絡をとる友野であります。
ぴぽぱ。
そしていきなり、腰が日本海溝くらい低くなります。
「あ、もしもしぃ~? グループSNEの友野詳でございます」
ぺこぺこ。
「お世話になっております。いま、お電話よろしいでしょうか? 先日は酒席でご一緒させていただいて、たいへん楽しく。はい、こちらこそ。ところで、あの時に機会があればセッションに参加していただけると……はい、はい。そうなんです、機会ができまして。じつはリプレイにプレイヤーとしての参加をお願いしたいのですが。え! 引き受けていただける? ありがとうございます。では詳しいことはまた企画書をメールさせていただきますので」
緊張しまくって電話している私を、珍獣のように見つめる一同。
「あの、友野さん、どなたに?」
「うん。鈴木銀一郎先生」
「「「どばぶしゅーーっ」」」
三人そろって盛大に耳血と鼻血を噴出。
それも当然でしょう。
アナログゲーム界の最長老、鈴木銀一郎先生。
我々全員、安田均ボスの書いたものと鈴木先生のお書きになったものを読んで、ゲーマーとして育ってきたのでありますからな。
「えーと、あと何人か候補いるけど、ちょっと待ってくれる?」
「いや、友野さん。我々、すでに満腹なのですが」
さてさて、さらに数日後。
「あのう、友野さん。他のプレイヤーさんはどうなりました? 鈴木先生がいらっしゃるとなると、太刀打ちするにはかなりの方でないと……」
「うん。そう思って、F.E.A.R.の鈴吹さんに電話してんけどな」
「「「ぶしゅーーっ」」」
同じリアクションは工夫がないですぞ、諸君。
「そっちで、誰かええ人、推薦してもらえん? って頼んだら『なぁに言ってんの。友野さんのリプレイなら、オレが行くよーっ』って言うてくれはってな」
「「「どぶしゅーーっ」」」
三人、死屍累々。
西のSNE、東のファー・イースト・アミューズメント・リサーチ。
自分たちで言うのも口幅っとうございますが、TRPG界では並び称されるデザイナー集団です(むろん、他にも多くの優れたデザイナーさんたちがおられるのですが。フォローフォロー)。
そのF.E.A.R.の社長であられ、トーキョーNOVAやブレイド・オブ・アルカナのデザイナーでもある鈴吹太郎さんは、同社設立当時に出会って以来、友野とは切磋琢磨するライバルにして親友。
鈴吹さんはF.E.A.R.でデザインされた多くのTRPGのリプレイにおいて、珍妙な、もとい、奇天烈な、もといユニークな(このへんにしとこう)プレイヤーキャラクターを演じておられます。
出血多量で気を失いかけた三人が立ち直ったころを見計らって、私は言った。
「あとね。女性プレイヤーも欲しいなぁと思て。んで、深沢美潮先生にお願いしてしまいました」
「「「どばぶしゅーーっ」」」
うむ、生死判定には成功するのですぞ、諸君。
ライトノベルというジャンルを成立させた作家を五人あげろといって、入らぬわけのない〈フォーチュンクエスト〉の産みの親。何がすごいって、ライトノベルの草創期からはじまって、まだシリーズは大人気継続中なんですよ?
すげえ。
深沢先生の代表作である〈フォーチュンクエスト〉も、ご存知のようにTRPG化されていおります。もちろん、深沢先生御自身もTRPGにボードゲームと、ゲームが全般に大好きなお方。
SNEのメンバーとも何度か卓を囲んだことのある仲良しではあるのだが。
でもやっぱり、ビッグネームの大スターなので、リプレイのプレイヤーさんをお願いするというのは、いや我ながら。
「友野さん……チャレンジャーですねえ……」
もちろんですとも。
ものごとは、何にせよ、つまらないより面白いほうがいいに決まっているのです。
かくして、忙しいお三方の都合をくりあわせていただき、某月某日(バラすと、そんなスケジュールでっ、とあちこちに波紋を投げかけそうなのであえて伏せる)、セッションとあいなったので……。
「友野さん、友野さん、もう一人くらいプレイヤーがいたほうがいいんじゃ」
「そうですね。ルールのわかる若手とかどうです?」
「デモンパ班には片山泰宏と大井雄起という、いきのいいのがおりますが」
「……そうだなあ。片山も悪くはないけど、今回は、大井にしておこう」
「ほう、それはなぜ?」
「だって、やつ、うちの最年少やん。というか、たぶん業界最年少。最年長の鈴木先生がいてはるから、リプレイで最もプレイヤー年齢差が大きくなるはず!」
「「「そんな理由かーい!」」」
そんな理由です。
うふふ、小学生がプレイヤーの『ピーカーブーリプレイ』でも、年齢差はこれより小さいはずだ! (笑)
ということで。
このすごいメンツで、どのようなセッションが繰り広げられたのか。
それはぜひ、本編をお楽しみください。